関節モビリゼーションは関節包内運動を正常化することを目的として行うテクニックです。 関節包内における関節面相互の円滑な動きがなければ、正常な関節運動は達成されない。したがって、筋や腱など軟部組織の緊張のみならず関節包内における関節相互の位置関係の異常は関節運動に制限を与える重要な因子となりうる。 AKAは関節モビリゼーションを運動療法に組み入れて応用したものです。 (A)関節の位置 関節は角度によって、周囲軟部組織の緊張状態や関節面相互の接触面積などが変わり、動揺が生じやすくなったり、逆に生じにくくなったりする。この観点から、関節の位置を二つに分類する。 1)しまりの位置 外力を加えても動揺がみられない安定した関節の状態で、二つの関節面が広い範囲で接触している上に、関節包および靭帯が最も緊張している。 2)ゆるみの位置 しまりの位置以外の関節の状態で、外力によって容易に動揺が生じる。このうち最もゆるんだ肢位を最大ゆるみの位置という。関節モビリゼーションは通常この肢位で行われる。関節面相互の接触面積が小さい上に、周囲の軟部組織の緊張がゆるんでいる。 (B)関節包内運動の構成運動 骨運動に伴って生じる関節面相互の不随意的な動きをいい、滑り・転がり・軸回転の3つが含まれる。(図3−2)生体では通常、2つ以上の構成運動が組み合わされた複合運動が行われる。例えば、膝関節の屈伸では、脛骨面上での大腿骨顆部の転がりと滑りが同時に行われていて、運動軸も関節相互の接触点も移動している。 1)滑り・・・・・・関節面の一方が移動し他方が固定されるような運動をいう。 2)転がり・・・・関節相互の接触部が常に移動し変化するような運動をいう。 3)軸回転・・・・関節面の一点が移動せず、接触を保ちながら中心軸の周りを回旋する運動である。
C)関節包内運動の副運動 関節周囲筋群の伸張性や関節包の持つゆとりの範囲内で、他動的にのみ行うことのできる運動のことで、通常の骨運動では起こり得ない。遊び運動とも呼ばれる。 (D)関節包内運動の法則 1)関節頭の法則・・・・・・凸の法則ともいう。関節かが固定され関節頭を有する骨が動く場合、関節面は骨体が動く方向とは逆の方向に動く。(図3−3 a) 2)関節かの法則・・・・・・凹の法則ともいう。凸面の関節頭が固定され関節かを有する骨が動く場合、その関節面は骨体が動く方向と同じ方向に動く。(図3−3 b)
(E)関節機能異常 関節包内運動が障害された結果発現してくる多様な症候群を意味する用語である。症状は痛みを主とし、それに可動域制限、感覚異常および筋スパズムなどが随伴する。これを原因により、一次性と二次性に分ける。 1)一次性関節機能異常 関節包内にも包外にも器質的病変が何ら存在しないにもかかわらず、関節機能異常としての臨床症状を認めるもので単に「関節機能異常」という場合は、一般にこれを意味する。好発する関節は仙腸関節で、「ギックリ腰」の多くはこれに起因するとされている。靭帯補強の強い関節では、ゆるみの肢位において、遊びの範囲を超えて生じた関節相互の微妙なずれが、そのまま不適合関係におかれた状態でしまりの位置として固定される場合が少なくない。これが、一次性関節機能異常の主な発現機序であろうと考えられている。 2)二次性関節機能異常 筋・腱、靭帯、関節包など関節周囲組織に明らかな器質的病変の認められる関節機能異常で、一次性関節機能異常に続発する場合が多い。 (F)骨盤の歪みは仙腸関節の機能異常 骨盤は、脊椎を支える仙骨を中心に、左右から寛骨が取り囲むような立体構造をしています。寛骨という骨は、腸骨、坐骨、恥骨という3つの骨がつながってできています。そして仙骨と腸骨の間には仙腸関節と呼ばれる関節があり、最近この関節も関節包内運動をしていることがわかってきました。 仙腸関節の包内運動異常は、「立体骨格である骨盤の立体的変位、あるいは運動的変位」を引き起こします。つまり骨盤が元の正常な形ではなくなってしまうわけです。この状態を「骨盤のゆがみ」といいます。 人体の体重の60%は上半身の重みであるとされています。この上半身の重みは横方向の力に変換されます。つまり骨盤は、上半身の重みによって、常に外側に広げられる力を受けているわけです。 この力に対抗(拮抗)しているのは、骨盤を取り巻く多くの靭帯と筋肉の力です。仙腸関節の微妙な運動、すなわち仙腸関節包内運動はこの2つの力のバランスに基本的にコントロールされていると考えてよいでしょう。 この2つの力のバランスがくずれると、微妙な仙腸関節包内運動はスムーズに行われなくなります。このような仙腸関節包内運動の異常が、仙腸関節の機能異常を引き起こし、周囲の筋肉、靭帯などの組織に異常な負荷を与え、痛みやしびれの原因となるのです。2つの力のアンバランスは、一般的に疲労や運動不足など、骨盤を保持する力の低下によって引き起こされることが知られています。
仙骨関節かかる力のアンバランス ↓ 仙腸関節包内運動の異常 ↓ 仙腸関節機能の異常 ↓ 骨盤のゆがみ (骨盤骨格のアライメントの異常) ↓ 腰痛などの症状発見
骨盤の歪みとは、骨盤にある関節群、すなわち「左右の仙腸関節」、「左右の股関節」、「腰仙関節」の複合的な関節機能異常であり、医学的には「骨盤骨格のアライメントの異常」であると大きくとらえたほうが適切である。 (G)ぎっくり腰 ギックリ腰のほとんどは仙腸関節の捻挫と考えて良く、ごく少数に椎間板ヘルニアがあり、高齢者では脊椎圧迫骨折も考慮されなければならない。 施術・・・・・痛みのために体位変換が困難であるので、最初から側臥位とし、仙骨の前屈下方滑り法と離開法を用いる。
1)前屈下方滑り法・・・・患者は左側臥位で股・膝関節を軽度屈曲位にする。術者は患者の背側で尾側方向にむかって位置する。 仙骨部に当てる右手はやや頭側にずらし、手根部がL5棘突起にあたるように置き、左手は前上腸骨棘の下方に当てて腸骨を固定する。仙骨側の手でS1部を中心に仙骨を尾側前方に向けて圧迫する。(図1) 2)離開法・・・・患者の肢位は1)と同じ。術者は患者の腹側に立ち、右手の母指球をS1・S2の正中仙骨綾右側に広く当て下方に圧迫する。左手は示指、中指、薬指の三指を後上腸骨棘に当て手根部は腸骨綾に置き、腸骨を手前に引き寄せるようにする。(図2)